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健康コラム
専門医が語る病気の知識
NSAIDs胃潰瘍(NSAIDs-associated gastric ulcer)

 痛みを止めるために使われる非ステロイド系消炎鎮痛薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs;NSAIDs)は、慢性関節リウマチ骨関節疾患の治療や脳梗塞心筋梗塞の予防と治療に広く使用されています。このNSAIDs(エヌセイズ)を長期服用することにより胃潰瘍が引き起こされることがあり、NSAIDs胃潰瘍といわれています。NSAIDsを服用していると、内服していない人に比べて約10倍胃潰瘍にかかり易いといわれています。

成因

 NSAIDs胃潰瘍の成因には次の2つがあります。第1にNSAIDsは胃酸の存在下で胃粘膜を直接傷害します。胃粘膜では粘液産生、重炭酸分泌、微小循環などを促進することにより、胃粘膜を保護するプロスタグランジン(PG)と呼ばれる物質が作られています。第2としてNSAIDsはこのPGの合成を抑制し、胃粘膜防御機構(さまざまな内的・外的刺激から胃粘膜を守り、本来胃粘膜が持つ恒常性を維持しようとする働き)を破綻させて胃粘膜傷害を引き起こします。

症状

 約半数は無症状です。症状がある場合は、胃痛胃のはった感じ食欲不振が主な症状です。その他に胸やけ、吐き気、嘔吐などがあります。約20%の方に吐血下血が起ります。

診断・検査

 胃内視鏡検査を行う必要があります。 当院では胃内視鏡検査を受けられます。

治療

 まず可能ならばNSAIDsの服用を中止し、通常の潰瘍治療を行います。しかし、慢性関節リウマチ、脳梗塞、心筋梗塞などでNSAIDsを中止することは、病気の再発・悪化の危険があり困難です。このような場合はNSAIDsの内服を続けながらNSAIDs胃潰瘍の治療を行います。薬剤としては、胃酸分泌を強力に抑える薬が使われます。これにはプロトンポンプ阻害剤やH受容体拮抗剤とがあります。ただし、H受容体拮抗剤は通常の潰瘍治療よりも高用量が必要になります。また、PG製剤も使用されますが、腹痛、下痢などの副作用が問題になります。

予防

 NSAIDsと併用してプロトンポンプ阻害剤、高用量のH受容体拮抗剤、PG製剤を内服します。また、NSAIDを服用している方で上記の症状が出現した場合は、我慢することなく、消化器内科を受診して胃内視鏡検査を受けることをお勧めします。特に高齢者、潰瘍の既往歴がある方、複数のNSAIDsを服用されている方、血液をサラサラにする抗凝固療法を併用されている方、アルコールを飲まれる方にNSAIDs胃潰瘍の発生の危険性が高いといわれていますので、注意が必要です。