胃食道逆流症の自覚症状には胃酸の食道内逆流と明らかに関連する「胸やけ」、「呑酸」、「嚥下痛」、「嚥下困難」などの食道症状があります。「胸やけ」とは胸骨の裏側のチリチリやける感じを指しますが、患者さんが「胸やけ」を表現する時に、胸痛、不快感(重苦しい、いやな感じ)、などさまざまな言葉が使われています。「呑酸」は胃液が口腔内まで逆流して来るもので、胃液の酸味と苦味を口の中に感じる症状を言います。「嚥下痛」は、物を飲み込む時に、焼けるような、押されるような痛みを感ずること、「嚥下困難」は、物を飲み込む時に、胃まで下りていきにくい状態のことを指します。
食道症状以外の胃食道逆流と関連すると考えられる症状を食道外症状といい、以下のものがあります。
慢性の咳、気管支喘息などの呼吸器症状
逆流と咳に関連する機序として、胃酸などの逆流物が食道壁を刺激し、延髄を介して気道・肺の運動神経を刺激する説(反射説)、逆流した胃液の微量誤嚥による気道への直接刺激によるとの説(誤嚥説)があります。
喉の違和感、咽頭痛、副鼻腔炎、中耳炎,耳痛、声枯れ、などの耳鼻咽喉科症状
典型的な「胸やけ」、「呑酸」等の胃食道逆流症の食道症状を伴わない胃食道逆流に起因する咽喉頭疾患は咽喉頭逆流症(Laryngopharyngeal Reflux Disease; LPRD)と呼ばれています(健康コラム【咽喉頭酸逆流症】をご覧下さい。Click)。有名人ではアメリカ合衆国第42代大統領のビル・クリントン(1946-)の声枯れは胃食道逆流症によるものであると言われています。
非心臓性胸痛(non-cardiac chest pain: NCCP)
胃食道逆流症では狭心症や急性心筋梗塞などの虚血性心疾患と区別がつきにくい胸痛が見られる場合があります。非心臓性胸痛のうち胃食道逆流によるとされる胸痛は40〜50%と報告されています。
歯牙酸蝕(う歯),味覚異常,口腔内異常感症などの口腔症状
胃食道逆流症の約20%に歯牙酸蝕(う歯)が見られます。上記の口腔症状は唾液分泌量の低下と嚥下機能低下によるものと推測されています。
睡眠障害
胃食道逆流症の睡眠障害の原因は主に夜間の逆流症状によるものと考えられ、胃食道逆流症患者の50%が睡眠障害を有しています。睡眠障害により胃食道逆流症の症状を増悪させることから、悪循環の存在が示唆されます。十分に夜間の胃酸分泌を抑制し、夕食から就寝まで3時間以上あけること、睡眠時は頭位挙上での睡眠が勧められます。
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