TEL:0561-64-3737
健康コラム
専門医が語る病気の知識
胃食道逆流症 (Gastroesophageal Reflux Disease: GERD)

 食道と胃の境目の逆流防止機構が障害され、胃酸などの胃内容物が食道内へ逆流することにより、胸やけなどの症状を来す病気です。症状としては、胸やけが典型的ですが、それ以外にもさまざまな症状を示します。胸痛、咳、喉のイガイガ感、喉に何かつまっている感じ、声が枯れる、耳の痛み、などと症状は多彩です(健康コラム【咽喉頭酸逆流症】をご覧下さい。Click )。高齢者の増加、食生活の欧米化により、最近この病気が増えています。さらに、胃・十二指腸潰瘍の原因であるヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療後には、胃粘膜が正常化して胃酸分泌が改善するために、この病気は増加します。食道癌、胃癌、胃・十二指腸潰瘍などでも、胃食道逆流症と似たような症状を起こすこと がありますので、内視鏡検査を受けて原因を確かめることが大切です。また、心筋梗塞や狭心症といった心臓の病気でも似たような胸痛を起こすことがありますので、症状を詳しく医師に説明することも大切です。以下に治療について述べます。

生活習慣の改善

 お腹の圧が上がると、胃内容物の逆流を起こしやすくなりますので、次のことに気をつけましょう。肥満や便秘にならないようにする。重いものを持ち上げる、椅子に座って仕事をする時の前かがみ姿勢、腰をかがめての作業、排便時のいきみ、などをなるべく避ける。またコルセット、ベルト、ガードル、帯などでお腹を強く圧迫しないようにする。就寝時に上半身を少し起こした体位(20~30度くらい)をとる。
 食事の注意点としては、食べ過ぎ、早食い、夜食は控えてください。一般的に以下のような食物や嗜好品は胃食道逆流症を悪化させるので、症状が強い時は、避けた方がよいとされています。脂肪の多い食事、香辛料、コーヒー、チョコレート、甘味和菓子、たばこ、アルコール、緑茶、たまねぎ、 かぼちゃ、さつまいも、トマト。胸やけを起こしたことのある食べ物も控えましょう。 また、高血圧治療薬のカルシウム拮抗剤や喘息治療薬のテオフィリンは逆流を起こすことがありますので注意が必要です。

薬物療法

 胃酸分泌を抑える薬が使われます。これにはH2受容体拮抗剤とプロトンポンプ阻害剤があります。消化管運動改善薬を併用することがあります。ただし、逆流を起こしやすい状態を薬で完全に治すのは困難であり、薬を止めると症状の再発が多くみられます。

内視鏡的治療

 内視鏡を使って食道と胃の接合部を縫い縮めることで逆流を抑制する内視鏡的噴門部縫縮術(Endoluminal Gastroplication、ELGP法)が試みられています。症例数が少なく、安全性と治療効果の持続性に関していまだ満足のいく報告がありません。

外科的療法

 重症例に対しては手術療法もありますが、日本では重症例が少ないため、手術が必要とされる方は少ないです。最近は腹腔鏡を使った手術も行われるようになりましたが、まだ一部の医療機関でしか行われていません。