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健康コラム
専門医が語る病気の知識
機能性ディスペプシア (Functional Dyspepsia: FD)

 胃癌や胃潰瘍などのはっきりとした病気(器質的疾患)がないのに、みぞおちの痛み、不快感(胃もたれ、むかつき、膨満感)、食欲不振などの症状が続いている方はいませんか?それは、胃の機能異常などの目に見えない原因によって引き起こされる機能性ディスペプシアという病気かもしれません。日本人の4人に1人がこの病気であると言われています【Domestic/International Gastroenterology Surveillance Study (DIGEST), 1996】。機能性ディスペプシアは今まで、慢性胃炎や神経性胃炎などといわれてきました。胃でも腸でも症状がある場合、検査をすればその症状の元になる病気が見つかる筈だと考えておられる方が多いと思います。ところが、実際には胃腸の機能異常によるもの(機能的疾患)が60%以上であるとされています。 2016年の『ローマ基準Ⅳ 』(ローマに世界から学者が集まって決めた4回目の診断基準)では、機能性ディスペプシアの症状を4つに限定して、2つの症候群に分類しています。6ヶ月以上前から症状があり、直近の3ヶ月間に次の症状【(1) みぞおちの痛み、(2) みぞおちの焼けるような感じ、(3) 食後のもたれ感、(4) 早期飽満感(食事開始後すぐに胃が充満した感じとなり、食事を最後まで摂取できない状態)】が1つ以上あり、症状の原因となりそうな器質的疾患が胃内視鏡検査等で確認されていないこと、としています。

食後愁訴症候群 (Postprandial Distress Syndrome: PDS)

次の2症状(普通量の食事でも辛いと感じる食後のもたれ感がある、早期飽満感のために普通量の食事を食べきれない)の少なくとも一方が週に3日起こる。胃の動きが悪くなり、胃から腸への食物の排出が遅いことが原因。

心窩部痛症候群 (Epigastric Pain Syndrome: EPS)

少なくとも週に1日、みぞおちの痛み、みぞおちの焼けるような感じがある。胃酸過多が原因。

 診断としては、採血、内視鏡検査、超音波検査などによって癌や潰瘍などの器質的疾患がないことを確認することが重要です(当院では食道、胃、十二指腸の内視鏡検査、超音波検査が受けられます)。器質的疾患が否定されたら,いよいよ治療です。生活面では、十分な睡眠、規則正しい生活、ストレスを貯めない事を心掛けましょう。食事は1日3回規則正しく、よく噛んでとり、暴飲暴食をしない。脂肪の多い食事、香辛料、甘味和菓子、たばこ、アルコールを控える、ことが大切です。薬物療法ですが、食後愁訴症候群の場合は消化管の運動機能を改善させる薬(消化管運動促進剤)を使用します。また、アコチアミド(Acotiamide)は食後愁訴症候群の方に有効です。心窩部痛症候群であればH受容体拮抗剤やプロトンポンプ阻害剤といわれる胃酸の分泌を抑制する薬(酸分泌抑制剤)を用います。